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医薬品、衛生材料などの製造販売を行う「小林製薬」のサプリメントを摂取した2人が腎障害などで死亡した。製品は米麹(こうじ)の一種である「紅麹」の成分を配合しており、効能をうたえる「機能性表示食品」だった。死亡した1人は、製品を約3年間、継続的に摂取していたとみられる。
同社は3月22日、紅麹の成分を含む製品について腎障害を引き起こす恐れがあるとして自主回収を開始した。同社の本社がある大阪市は27日、食品衛生法に基づく回収命令を出した。
何よりも優先すべきは、被害の拡大を防ぐことだ。小林製薬は現時点で把握している情報を迅速に全面公開し、消費者に丁寧な説明を行う必要がある。
サプリ摂取後に入院した人は既に100人を超える。むくみや尿が出にくいなどの症状のほか、一時、人工透析を受けた人もいるという。
林芳正官房長官は会見で「機能性表示食品の安全性に対する疑念を抱かせる深刻なものだ」と述べた。
最大の問題は対応が後手に回ったことだ。患者を診察した医師から同社に問い合わせがあったのは1月だった。同社は2月初旬には「何らかの回収」が必要と判断したと明らかにしているが、そこから自主回収までに1カ月半も要した。
自主回収の目的は、該当する食品のさらなる飲食を防ぎ、健康被害を封じることだ。同社の対応は、食品を扱う企業としての緊張感に欠ける。
健康被害を招いた真の原因物質は特定できておらず、摂取との因果関係もまだ明らかでない。ただ、製品からは製造工程で含まれないはずの未知の成分が検出されており、同社は関係を否定できないとしている。
原因物質の特定を急ぎ、混入の理由や経路を明らかにする必要がある。その作業を国が肩代わりして急ぐことも検討してもらいたい。
市場には混乱が広がっている。小林製薬は紅麹を52社に食品原料として販売したことを明らかにしており、提供を受けたメーカー各社などは自主回収を始めている。
政府は関係省庁連絡会議を開いた。消費者庁は6千件を超える機能性表示食品を緊急点検する。企業、国は協力して再発防止に尽力すべきだ。
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2024年3月28日付産経新聞【主張】を転載しています